IT/DX人材ニーズ~ユーザー企業編~第3位:DX推進部門-管理職ポジション

IT/DX人材ニーズ~ユーザー企業編~第3位にはDX推進部門-管理職ポジションがランクインしました。
皆さんDX(デジタルトランスフォーメーション)推進部門というとどのようなイメージをお持ちでしょうか。
あまり馴染みのない方からすると最新のテクノロジーを用いて企業を変革するキラキラしたイメージを持たれるかもしれません。
しかし、実態はそうではありません。変革を進めるための旗振り役という役割はありますが、社内に多くのステークホルダーが存在する非常に泥臭い仕事を担っています。
では、採用背景や部門に課せられる役割、求められる人材像などを見ていきましょう。
採用背景
採用背景を考察する前に、まずはDX推進部門の設置背景を見てみましょう。
日本企業は伝統的に縦割りの文化が強く、部門ごとに裁量を持ち、戦略策定・意思決定を行ってきました。
外部ツールの導入や部門内でのデータの収集・分析など、テクノロジーの活用においても多分に漏れず部門内予算で行う傾向があり、部門間にいわゆる"見えない壁”が存在しています。
その結果、テクノロジーの活用という文脈においては、
- 外部ツールやシステムの導入・運用コストが積みあがっている(コスト増大)
- 各部門が異なるルールで動いているため、全社統一が難しい(ITガバナンスの欠如)
- 得られたノウハウ・データの共有が適切に行われていない(サイロ化)
など、様々な問題が生じていました。
そんな中、2018年に経産省が発表した「DXレポート」をきっかけにDX推進が経営の一つのテーマに位置付けられ、2020年のコロナ禍を経て全社横断的な取り組みとして認知を得ました。

上記の画像でいうデジタルトランスフォーメーション(最上段)推進の旗振り役として、多くの企業で設置されたのがDX推進部門です。
具体的な活動としては、先端技術(生成AIやIoT)を活用した業務効率化やプロセスの自動化(RPA)、全社データ基盤の構築、ITインフラのモダナイズ、DX人材育成・文化醸成などが挙げられます。
これらをプロジェクト化し、各部門と協同して進める際、主導的な立場を担う場合もあれば、各事業部門が主導する中で技術支援的な立場で関わる場合もあります。
こうした活動に際して、DX推進部門には、技術的専門性および部門の垣根を越えられる円滑なコミュニケーションスキル、各部門の利益を最適化する調整力を有している人材が必要となりました。
部門の役割と求める人材像
前述した通り、DX推進部門は、全社的なデジタルトランスフォーメーションを推進する役割を持つ組織です。
デジタル戦略部やデジタルイノベーション部など企業によって様々な名称で呼ばれていますが、具体的な役割は下記3点に集約されます。
①DX推進に向けた全社戦略の立案と実行
経営戦略と連動した全社DX推進のゴール(目標)を設定し、それに向かって他部門と連携しながら変革を主導する。戦略立案・ロードマップ策定・具体施策の検討、全社視点でのIT予算管理・配分など戦略的業務だけでなく、全社もしくは複数部門にまたがる大規模プロジェクトの企画・全体設計・調整・統括業務や、テクノロジーを活用した新規事業の企画・開発業務も含まれる。
②各部門への技術導入および導入・プロジェクト支援(DXCoE)
技術的専門性を持つCoEとして、各部門が求める技術の導入・導入支援・ベストプラクティスの全社共有を行う。各部門の課題解消に向けた技術探索・PoCから、事業部門が主導するプロジェクトにおける技術支援まで技術的専門性を求められる活動全てのハブとなる活動を行う。
※CoE(Center of Excellence:組織横断的組織)とは、企業や組織内で特定の分野に関する専門知識やベストプラクティスを集約し、それを全社的に展開・推進するための組織横断型専門組織のことを指します。
※PoC(Proof of Concept)とは、「概念実証」のことを指します。
新しいアイデアや技術、製品、システムが実現可能かどうかを検証するために、小規模な試作やテストを行うプロセスです。
③DX人材育成および全社デジタル活用文化の醸成
DX推進を全社マターで進めるために、各部門内でコアとなるDX人材を育成・教育し、各部門へ輩出する。また、経営戦略に基づいたDX戦略、各種技術および施策の啓蒙を行うことで、全社デジタル活用文化の醸成を行う。
このような役割を果たすために、DX推進部門では、下記のようなスキル・経験を持つ人材を求めています。
- 全社方針に沿ってDX推進ロードマップの策定ができる
- 経営層および各事業部門と円滑なコミュニケーションを取り、社内コンサルのような立ち位置で解決すべきデジタル課題を定義できる
- 先端技術の探索、PoCを能動的に行える技術的専門性を有している
- ITリソース共通化によるノウハウ蓄積と費用対効果の底上げを全社規模で企画、推進できる
- DX人材の育成、既存社員のリスキリング、デジタル活用の社内啓蒙を行える
- 全社データの恒常的な収集と有効化を推進できる
- テクノロジーを用いた新たな利益源獲得(新規事業)の立案、推進が行える
こうしてみると、求められるハードスキルはITコンサルに近しく、ソフトスキル(マインドセットや動き方)は経営企画部門に近似していることが読み取れますね。
採用レイヤー
当社への依頼を分析してみると、入社時の職位は下記の通りでした。
役員級(CDO):9%
部長級:46%
課長級:36%
スペシャリスト職:9%
※見やすいように小数点以下は四捨五入しています。
多くの企業では、すでに内部での昇格、外部からの招聘を通じて役員級(CIO/CDO/CTO)を据えており、DX推進の大方針を立てていることがほとんどです。
一方、DX推進は大上段から方針を伝えていくだけでは、成功することはありません。
前述した通り伝統的に縦割り文化が存在し、事業部門の裁量が大きい日本企業においては、現場(事業部門)の協力を取り付けることが不可欠です。
他方では、業務フローおよびプロセスの変更やデータの入力実務にあたり、一時的に業務負荷が上がるため、事業部門側からするとデジタル活用に必ずしも賛成ではないケースも多く存在します。
こうした状況下でデジタルトランスフォーメーションを進めるためには、各部門上位層(役員・部長クラス)との折衝、部門間の利益(予算)調整、現場の協力体制構築など、ハードなネゴシエーションが必要となります。
そこで、既存部門とのハレーションを最小化しながら全社利益の最大化に向かってDXを推し進められる中核人材のニーズが高まっているという図式です。
こうした全方位的かつ高度な調整・交渉スキルは部門や職位の壁を越えたコミュニケーションが多く発生する管理職以上の役職者でないと経験していないため、管理職級のニーズが高いのだと言えますね。
報酬レンジ
5年程前からユーザー企業もITコンサルや大手システムベンダーのエグゼクティブをCIOとして高給で登用する流れがあり、社内システムの整備とともにDX推進にも着手してきました。
しかし、テクノロジー先行の進め方(あるべき論)で現場部門の協力を得られず、多くの組織が失敗してきた経緯があります。
そこから数年は情報システム部門や新規事業部門に倣う報酬水準でしたが、直近では報酬水準が上向いてきています。
内製化志向の高まりに伴い、DX推進部門ではコンサル出身者(マネージャー~ディレクター層)およびSI大手の中核層(課長~役員層)の登用を進めた結果だと推測されます。
こうした経緯から採用決定時の提示報酬レンジも多少上向いてきた印象です。
採用決定時の報酬レンジは下記の通りです。分かりやすいように年収換算(賞与含む)し、参考として中央値も付記しています。
〇雇用契約(正社員)
課長級:1,100万円~1,400万円(中央値:1,300万円)
部長級:1,600万円~2,200万円(中央値:1,900万円)
執行役員級(CDO):2,200万円~3,500万円(中央値:2,400万円)
※見やすいように中央値は100万円単位まで数値を丸めています。
部長級以上の報酬増加率が高いのは、コンサルティングファームのシニアマネージャー・ディレクター・パートナークラスや外資IT企業の部長・エグゼクティブを採用しているからですね。
ヘッドハンティングの場合、現職考慮で報酬を決めるケースが多いため、現職同等額は提示できなくとも、企業側は限りなく現職に近づける努力をします。
その結果、提示報酬額が多少高くなっているようです。
いかがでしたでしょうか。
一定規模の企業の場合、DX推進の方向性には共通項が見えてきます。2024年度はデータ活用と生成AI活用でしたね。2025年はどんなテーマが出てくるのか楽しみです。
といったところで、今回はユーザー企業編として第1位から第3位までまとめてみました。
ユーザー企業内で求められるIT/DX人材においては、総じて報酬水準が上がっており、需要の高さを感じますね。特にITリテラシーが高くない既存社員、既存部門と協働できるマインドセットを有していると高く評価されそうです。
今後、ユーザー企業に転職を検討する場合は念頭に置いておきましょう!
次回からはITサービス・プロダクト開発企業編です。どんなポジションがランクインするのか楽しみにしていてください。

向井 綾汰
2015年、SFJに入社し、製造、IT、インフラ、通信等、幅広い業界のリサーチ、コンサルティングに携わる。2019年よりITユニットのヘッドとして、役員・CxO・PM/PdM等、幅広いレイヤーのIT/DX人材獲得案件を主導。2021年にSFJ NEXT設立を主導しゼネラルマネージャーとして事業を牽引。2024年より代表取締役社長就任。
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