「IT戦略の全体像」第1回 デジタル技術をちゃんと活用しよう

皆さん、こんにちは。
4年に一度の冬季オリンピックが開催され、毎日のようにマスコミを賑わせています。今回はミラノを含むイタリア北部の4つの地域での分散開催になっていて、背景には費用を抑えるために既存施設を活用する意図があると報道されています。サステナブルなオリンピックの在り方なのかもしれません。
私は以前の仕事においてミラノに行く機会が少なからずあったので、テレビでドゥオーモの映像が流れてくると懐かしく思ったりします。ミラノはファッションの発信地で街はおしゃれ、歴史とモダンがうまく調和していて、また食事はどこに行ってもおいしいし、車で少し足を延ばせばスイスに行けたりと、旅行者にとって魅力的な地です。個人的にはアルファロメオの博物館に行く機会を持てなかったことが心残りです。
各種競技の映像を見ているともはやドローンの活用は当たり前、映像の分析情報も素早く提供されるし、デジタル技術の進歩を垣間見る思いがします。オリンピックだけではなく、デジタル技術は今日の企業において必須ツールですよね。
さりとて企業活動として取り組むことを考えれば、お金をいくらかけるべきか、どんな効果を得たいのかなど考慮すべき側面は多々あり、その企業にとって何に取り組むべきかを描くのは必ずしも容易ではありません。時流に乗ってつまみ食い的にAI活用などを考えることも否定はしませんが、周りに流されるような進め方はお勧めできません。
私自身は前職を退職した後、IT/セキュリティを中心としたコンサルタントを生業にしております。少なからずの企業の方々とお話しして困りごとを聞き、デジタル技術活用によって経営課題にどう取り組むかを描く支援をしてきました。言い換えるとIT戦略の策定に関わる多数の経験をさせてもらったわけです。その経験からの気づきを整理して、「IT戦略として網羅的にまとめるとこれだけありますよ」って話をこのブログでは書いていく予定です。風呂敷を広げてみましょうということなので、それを参考に自社はどこに優先的に資源を投入するかを考えてもらえるならば幸せです。
ITが経営に必要なツールと考えた時にまず考えるべきは、そのツールにどんな便益を期待するのかです。便益もはっきりしないのにお金をかけてIT基盤の整備を行うのは不毛ですよね。
その便益を実現するためのデジタル技術活用を3つの段階(Digitization→Digitalization→Digital Transformation)で示したフレームワークは有名ですね。総務省の表現を借りると以下のように説明されています。(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd112210.html)
- Digitization
既存の紙のプロセスを自動化するなど、物質的な情報をデジタル形式に変換すること - Digitalization
組織のビジネスモデル全体を一新し、クライアントやパートナーに対してサービスを提供するより良い方法を構築すること - Digital Transformation
第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること(一部略)
企業内にアナログデータが支配する業務があるなら、まずDigitizationは最低限やっておくべきだし、それができてなければ次の段階であるDigitalizationに駒を進めるのは難しいでしょう。そう考えるとこの3つの段階は順序も表していると考えるのが分かりやすいように思います。
会社の姿が変わってしまうほどの変革(Transformation)を目指すかどうかは企業の考え方次第と思いますが、デジタル技術から得られる便益の多くがビジネスプロセスの効率化や高速化、精緻化などであることを考えれば、便益を生み出す中心的な段階であるDigitalizationに自社がどう取り組むか、どういう状態を目指すべきかを考えることは経営にとって避けて通れない時代になったと言えるでしょう。
このようなDigitization、Digitalizationを実現するための企業ITの構造はITアーキテクチャと呼ばれます。どんな便益を得るためにどんなITの仕組みを実現するのか、ここがIT戦略の重要なパートになることは言うまでもありません。
一方、便益を主軸にITアーキテクチャを考えて構築を進める際に、ガバナンスの効かないやり方は様々な問題を生み出します。私は自身の経験から、ITにガバナンスの効かない組織のITアーキテクチャは複雑さが増し、費用対効果は下がり、セキュリティリスクは上がると考えています。従ってIT戦略ではITアーキテクチャのような「攻め」の要素だけでなく、「守り」の要素についても方向付けすることが重要になってきます。
「守り」について考える時に私は2つの概念で説明するようにしています。1つは自社におけるITの標準の在り方に組織全体が従うことでデジタル技術の便益を安全に効果的に享受できるようにする取り組みで、ITガバナンスと呼びます。
もう1つはITに投入すべき経営資源の効果的な配分・活用に関する取り組みで、ITマネジメントと呼びます。ITマネジメントはITガバナンスの実現を下支えする側面も持っているので、これら2つの取り組みは「守り」を固める上で相互補完的に働くと言えるでしょう。
ここまでの話を模式的に図にするとこんな感じになります。

もう何年も前から巷の各種メディアではDXに関する話を見ない日はありませんが、それらは主に「攻め」の結果としての便益にフォーカスした話がほとんどです。その前提となる「守り」に関する議論はそれらとは別の文脈で別の記事(例えば、どこそこの会社がサイバー攻撃にやられたとか)に載るわけですが、あたかもDXとは別の事象のようにして語られることに私は疑問を感じます。
企業におけるIT戦略とは、「経営戦略実行のためのデジタル活用の方向性を中長期視点で描いたもの」だと思いますが、「守り」と「攻め」を俯瞰的にとらえた上でどこに優先的に取り組むかを議論することが必須です。自社のITに関する話が「攻め」のみに終始しているなら、それはリスクがあると考えた方がいいでしょう。基礎を打たずにビルを建てるような議論になっていないか点検した方がいいですね。
ブログ初回の今回は、その3つの構成要素を紹介しました。
「攻め」を語るITアーキテクチャは便益を得る仕組みの戦略的構築、「守り」を語るITガバナンスは自社標準のITの在り方への統制、ITマネジメントはITに投入する経営資源の管理を扱います。
次回以降、それぞれの構成要素に関してもう少し掘り下げたいと思います。

村田 すなお
北海道大学卒業後、デジタルテクノロジーを軸にして国内大手精密機器メーカー2社に勤務。新規拠点立ち上げのためのカナダ赴任や事業加速のためのM&A推進などの経験を経て、2014年以降は執行役員として経営全般に関わる。キャリア後半ではCIOとしてグローバルなIT推進全般を遂行、業務システム、ITインフラ、サイバーセキュリティ、AI、DXなどの戦略立案、企画、設計、運用などを指揮。
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