IT/DX人材の採用ニーズ~ITサービス提供企業編(後編)~

2025年11月12日ITサービス提供企業編

前回に続きITサービス提供企業の採用ニーズを深堀してみますが、後編では共通する採用ニーズとその背景に着目し、考察してみます。

共通する採用トレンド

2024年度のITサービス提供企業におけるIT / DX人材の採用トレンドを一言で表すと、“ビジネスマインド(事業視点)を持つエンジニア"でした。

単に優れたコードを書けるエンジニア(≒プログラマ)よりも経営の意図を汲み取り、市場や顧客のニーズに寄り添った開発を主導できるエンジニアの価値が高騰しています。


これは、前述した自社プロダクト開発型企業だけでなく、開発を請け負う支援型企業においても同様です。

では、なぜこのような人材ニーズが高まったのかを①技術革新、②歴史的背景およびエンジニアの性質の2つの視点から考察してみましょう。


技術革新

Ⅰ.複合的な要素技術の革新的進化

2020年代に入り、複数の要素技術の普及・浸透により「作ること(=機能実装)」そのものは劇的に易化されました。このタイミングでIT業界の提供価値は「実装」から「構想・設計」へと重心が移り始めたと言えるでしょう。

要素技術の進化について具体例を挙げてみましょう。

 クラウド / SaaSの成熟

→AWSやGCPなどのパブリッククラウド、SaaS群の標準化により、基盤構築や共通機能の内製化が不要に。環境構築やデプロイは簡素化し、技術的な参入障壁が大きく低下した。

モダンアーキテクチャの普及

→マイクロサービス・API連携が定着し、さらにコンテナやサーバーレスといった実行基盤の進化によって、システム全体の柔軟性と拡張性が飛躍的に向上。これらの要素技術が相互に連携することで、機能のモジュール化・再利用が進展し、コスト最適化とスケーラビリティの確保だけでなく、開発スピードや市場変化への対応力も大幅に改善された。

生成AIの登場

→コード補完やドキュメント生成、要件整理までもが自動化。実装・保守の属人性を解消し、思考工程に集中可能となった。

中でも特に大きな転換点となったのが、2024年からの生成AIの台頭です。
その他の技術は、まだまだ人間の介在余地が残されていますが、生成AIの活用により、人間らしい行動を高精度かつ自動で行うことが可能となり、ホワイトカラー職のAI代替が現実味を帯びてきています。

Ⅱ.企業がエンジニアに求める視点の変化

このように技術が均質化した現代においては、「ただ作ること」よりも「どう設計するか(How)」「何を作るか(What)」「なぜ作るか(Why)」の判断が圧倒的に重要になっています。

この状況で企業が重視しているのは、事業の成果を上げるために技術をどう使うという視点です。技術選定や設計判断に「事業上の目的との結びつき」を強く求めるよう変化しています。

そのため、この先エンジニアに求められるのは、単にコードを書くスキルではなく、事業の目的や顧客体験を理解したうえで、それを最も効率的かつ持続的に実現できる仕組みを考え抜き、実現する力といえます。経営陣や事業責任者(PdM)と同じ目線で、「何を作るか(What)」「なぜ作るか(Why)」「どのように作るか(How)」を説明し、意思決定に関われるエンジニアが評価されるようになっています。

クラウドや生成AIのような技術革新は、開発を効率化する一方で、エンジニアにより高い思考力と判断力を要求する時代を生み出しました。企業はもはや「作れる人」ではなく、「考えて形にできる人(ビジネス視点を持つエンジニア)」を求めています。


歴史的背景とエンジニアの性質

Ⅰ.歴史背景

日本におけるIT産業の成長は、1990年代後半のインターネット黎明期から2000年代のWebサービスの台頭、2010年代のスマートフォン普及、2020年代のDX・SaaSブームへと段階的に加速してきました。

こうした流れの中で、ITベンチャーや新興のスタートアップ企業は、既存産業の枠にとらわれない速さで事業をスケールさせてきました。ここで主役となったのが「若年層の理系出身者」「独学でスキルを身につけた非主流キャリアの人材」です。

特に2000年代以降、以下のような背景をもつ人材がITエンジニア職として台頭してきたと言われています。

技術的好奇心を動機にプログラミングを始めた人材

→ 動機が好奇心・創造性など内発的であり、ビジネス(金銭的成果や売上・利益の最大化)への関心が高い訳ではない。

大企業や官僚的組織に馴染めなかったアウトサイダー気質の人材

→ 独立性や個人の自由を重視し、階層的な組織よりもフラットな文化を志向。

研究者タイプでこだわりの強い人材

→ 経営戦略全体との整合性(市場ニーズやユーザー体験)よりも技術的優位性や正しく作ることを優先する。

Ⅱ.エンジニアの性質

このように、従来のエンジニアの多くは「自身の興味・関心の追求が可能な環境」や、「自由かつ成果主義的な文化」を好む性質を持っています。

そして、ITベンチャーや新興のスタートアップ側もルールや規定の順守よりも彼らの持つ実装力を中心とした技術力求めていたことから、その性質を許容していました。その結果、自身の興味・関心・こだわりの追求が許される環境が構築されてきたというのが歴史的な流れです。

一方、現代においては、後述する技術革新の影響により、一定水準のプロダクトは少人数・短期間で開発できる時代になりました。
かつて優位性を保っていた実装力が急速に価値を失いつつある状況です。

誰もが一定水準以上の機能を持つプロダクトやサービスを開発できる現代において、企業には技術的に優れたものではなく、真に顧客や市場が求めているものを作ることが求められるようになっています。

顧客の課題を的確に捉え、技術を手段として価値を設計・提供しなくてはすぐに類似プロダクトやサービスが開発されてしまいます。まさに“技術起点”から“課題起点”へとシフトしていると言えるでしょう。

このような環境変化の中で、企業に必要とされる人材は、旧来の実装力に優れたエンジニアではなく、顧客に受け入れられるものを作り上げられるビジネスマインド(事業視点)を持つエンジニアであり、これが採用トレンドに繋がっています。


ITサービスを取り巻く環境もここ数年で大きな変化を迎え、現代のITサービス提供企業においては、よりユーザーの利便性が高く利益の出るサービス・プロダクトを追求する志向が強くなっています。

その結果、経営からエンジニアに求める要素が変化しており、国内エンジニアの有するスキル・マインドとの間にギャップが生じているのが現状です。技術力を基盤に市場や顧客の目線を持ち、チームを統率してサービスやプロダクトを作りだせる人材は、どこの企業も喉から手が出るほど欲しい人材だと言えますね。

また、欧米のエクセレントカンパニーに目を向けると多くの経営者がITバックグラウンドを有し、ITと事業の両面に深い理解を有しています。つまり逆説的に考えると、日本のエンジニアも自身のITバックグラウンドを活かして経営者へのステップアップが可能であると言えます。
この事実を認識し経営者への道を切り拓くエンジニアが増えれば、日本にも高度なIT活用を前提とした国際競争力に長けた企業が増え、世界的なプレゼンスが向上するかもしれません。期待しています。

いかがでしたでしょうか。

次記事以降では、ITサービス提供企業の具体的なIT/DX人材ニーズをランキング形式で発表します。今回まとめた共通トレンドを踏まえて読んでみてください!

Profile
代表取締役社長/President
向井 綾汰

2015年、SFJに入社し、製造、IT、インフラ、通信等、幅広い業界のリサーチ、コンサルティングに携わる。2019年よりITユニットのヘッドとして、役員・CxO・PM/PdM等、幅広いレイヤーのIT/DX人材獲得案件を主導。2021年にSFJ NEXT設立を主導しゼネラルマネージャーとして事業を牽引。2024年より代表取締役社長就任。
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