【採用の現在地と未来~2025年のトレンドと実践的アプローチ~】第4回 持続的成長を実現する採用戦略の全体像

はじめに:2025年の採用戦略が問われる理由
2025年の日本企業は、これまでにないスピードと複雑さで変化する採用市場に直面しています。人口減少やデジタル化、グローバル競争の激化、そして働く人々の価値観の多様化。こうした時代に、企業の成長を本気で目指すなら、従来の「人を集める」発想から一歩進んだ“戦略的な採用力”が不可欠です。本稿では、これからの人事・経営層が押さえておきたい採用戦略の本質と、実践のための視点を整理します。
成長を支える3つの戦略軸
経営戦略と連動した採用戦略の策定と必要スキルの明確化
企業が持続的に成長するための採用戦略の第一歩は、経営戦略と採用戦略をしっかりと結びつけることです。この連動には、以下の3つのステップが不可欠です。
経営目標に基づく要員計画の策定
どの事業領域や成長分野に、どれだけの人材を配置すべきかを明確にします。
人材確保の方法選択
必要な人材を社内でリスキリングして異動させるのか、それとも外部から新たに採用するのか、現実的な選択肢を検討します。
必要スキル・経験の明確化
注力領域で成果を出すために必要なスキルや経験を具体的に定義し、採用基準や評価軸に落とし込みます。
こうしたフレームで考えることで、採用活動が経営の方向性とズレることなく、組織の未来を見据えたものになります。
データ駆動型採用プロセス
現代の採用活動では、データを活用した科学的な意思決定が欠かせません。応募者数、選考通過率、内定承諾率、候補者体験スコアなど、各段階のKPIを設定し、プロセスのどこに課題があるかを可視化することが重要です。
データ活用の本質は「プロセス改善」と「個別最適化」の両軸にあります。KPIをもとに採用プロセスのボトルネックを特定し改善策を講じることで、効率的かつ効果的な採用活動が可能になります。また、AIやATSなどのツールを活用し、候補者ごとの適性分析を行うことで、個別に最適なコミュニケーションや選考ステップを設計し、内定辞退率の低減や候補者体験の向上も実現できます。
外部知見の戦略的活用
採用環境が複雑化する中で、社内リソースだけで最適解を導き出すのは難しくなっています。採用コンサルティング、RPO、プロ人事などの外部パートナーの知見を戦略的に活用することは、変化への対応力を高めるうえで大きな武器となります。
前回までの連載で詳説したように、外部パートナーは単なる業務代行者ではなく、社内ノウハウの蓄積や新しい視点の導入に役立つ存在です。RPO活用時は「求人媒体の選定や運用」など業務範囲を厳密に定義することが重要です。自社の課題や成長フェーズに合わせて、どの領域をどのように外部と協働するかを考えることが、持続的な採用力強化につながります。
実践事例:外部パートナーと自社リソースを活かした採用力強化
パナソニックの四者連携体制
パナソニックは、採用ブランディング課・外部コンサルタント・RPO・プロ人事が連携し、SNSや動画を活用した情報発信を強化しています。採用サイトのエンゲージメント率は前年比で78%増加し、エントリー数や質の向上につながっています。
日本マクドナルドのOJT連動モデル
日本マクドナルドは、店舗で接客や調理を担当する「クルー」を中心とした情報発信や、元クルーのキャリアストーリーをSNSやCMで発信しています。季節採用でRPOを活用しつつ、RPO担当者同席のOJTを週2回実施し、ナレッジ移転を制度化しています。これにより紹介採用率が40%増加し、定着率も向上しています。
メルカリのオウンドメディア戦略
メルカリは、自社が運営する情報発信サイト(オウンドメディア)「mercan」を通じて社員のキャリアや働き方を発信しています。応募者の質向上と内定者の企業認知度100%を達成しています。プロ人事の知見を活かし、採用ブランディングや制度設計も進化させています。
持続的採用力を構築するための3つのアクション
経営目標と採用戦略の統合
自社の成長ドライバーを明確にし、必要なスキルや人材像を定義します。経営層と現場が共通認識を持ち、採用活動を進めることで、社内外の変化に強い組織づくりが実現します。
データに基づくプロセス改善
ATSやAI、SNS分析などのツールを活用し、採用プロセスのKPIを可視化します。現場の感覚だけに頼らず、科学的な意思決定でボトルネックを解消し、最適な母集団形成や選考スピードの向上を目指します。
外部知見の選択的導入
採用コンサルティングやRPO、プロ人事などの外部知見を活用しつつ、丸投げではなく自社内にノウハウを残す工夫が重要です。ナレッジ移転の仕組みや勉強会、定例ミーティングなどを通じて、採用担当者や現場のレベルアップを図りましょう。
未来の採用を切り拓くために
採用戦略に決して1つの正解はありませんが、経営戦略と人材戦略の統合が成長の分水嶺です。今、現場で感じている課題や迷いも、時代の変化に向き合っている証拠です。これまでのやり方を守るだけでなく、新しい視点や外部の力を取り入れることで、自社の採用活動に新たな可能性が生まれることもあります。日々の小さな工夫や、思い切ったチャレンジの積み重ねが、未来の組織をつくっていきます。この連載が、皆さまの採用活動に少しでも新しいヒントや勇気をもたらせたなら幸いです。

竹田 雅美
化粧品会社でPR、商品企画を経験し2007年にSFJに入社。入社後は、流通小売業界や製造業を中心に、マスコミ、ITといった多様な業界でスカウト実績を保有。2021年、SFJ NEXTに立ち上げメンバーとして参画。現在はIT/DX案件を中心に担当。安易なキャリアチェンジを持ちかける紹介会社のスタイルに疑問を感じマーケティングリサーチに基づいた「三方好し」のコンサルティングを心がけている。
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